秋草団地

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秋草団地

 秋草団地(あきくさだんち)は、国分寺崖線(こくぶんじがいせん)と呼ばれている崖を挟んで、その上と下に5棟ずつ、全部で10棟の団地です。 広い広い武蔵野台地が終わって、ちょうど多摩川べりの扇状地にガクリと落ちる20キロくらいの長さの崖が、国分寺崖線です。 崖の高さは10~50メートルもあるので、昔から付近にちゃんとした家は建てられませんから、古い木や草が生い茂り、崖肌には関東ローム層の美しい縞模様を見ることができます。その地層を通って流れてきた清らかな水が、ところどころからチョロチョロ湧き出て、薄暗い崖の下に小川や池を幾つも作っているのです。 どんな急な傾斜の崖でも、「高級な住所」が付くところだけは、住友や三井の大きな不動産屋がいろんな手を使ってマンションを建て、法外な値段で売り出したりしますが、それ以外の、どうにもならない崖と湿地だったところを、今から60年も昔に国が整備して作ったのが秋草団地でした。 敷地には緑をいっぱい残し、小川や池を作りました。 小川にはサワガニが、池には菖蒲が茂り鯉や亀が住み着き、いろんな鳥がやってきました。それらの水は野川や仙川に集まって、最後は多摩川に流れ込んでいくのです。こうして近代的な団地として出発しましたが、今や空き室も増え、住み残っているのはほとんど年寄りで、団地内は昼間でもひっそりとしています。 cf23f4b5-bc72-4348-892a-dc743f910ce6
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