第1章 おぎんこぎん

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お母さんがキッチンに入ってくると、 こぎんは流しで、コップに水を汲んで、ゴクゴク飲んでいました。 「ああ、びっくりした!いつの間に帰ったの?」 お母さんは言いました。 「いま。喉が渇いたの」 「おなかもすいたでしょ?おぎんはまだ庭にいるの?」 「うん」 「じゃ、おやつ庭に持ってって食べたら?好きなもの、買ってきたよ」 そう言って、スーパーの袋をゴソゴソやって 中からジャンボシュークリームと バナナカステラの袋を取り出して見せました。 「こっちはあんたの。シュークリームがいいわね?」 そういって、シュークリームを1個、パッケージに入ったまま、こぎんに差し出しました。 「おぎんはこっち。あの子はシュークリームは嫌いでしょ」 そう言って、バナナカステラ1本をパッケージから取り出すと、 どこに持っていたのか… さっき、便器の洗剤を綺麗にふき取ったタオルハンカチにクルリとくるんで、 小さいビニール袋にポイと入れ、ニッコリ笑って差し出しました。 「庭の水道でよく手を洗ってから食べるのよ、はい、あんたのハンカチ」 そう言ってお母さんは、おぎんのと色違いの、 水色にサクランボ模様のハンカチをシュークリームの袋に入れました。 こぎんのハンカチの方は洗いたてで、綺麗にたたんでありました。
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