第1章 おぎんこぎん

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うん、と頷いて、こぎんは部屋を走り出ました。 階段の踊り場まで降りると立ち止まって バナナカステラの入ってる、おぎんのビニールをそっと広げて覗きます。 「うわっ」 つん、と、洗剤のきつい匂いがします。 そのまま階段を駆け下りると植え込みの間にバナナカステラを捨てて、 足でぐちゃぐちゃにつぶしました。 それから裏の池の方に走って行って、 おぎんのハンカチを池の中の岩の間に押し込みました。 水面に洗剤の細かい泡が少したって、輪を描いて消えてゆきました。 花壇に戻ると、おぎんはぼうっと突っ立っていました。 「おぎんー!お母さんがおやつくれたよ」 「へえ、なにくれた?」 「シュークリームだよ、一緒に食べよー」 「あたし、シュークリーム要らないよ」 「そういわず食べてみてって、おいしいからさあ」 二人は水道で手を洗うと 一つのシュークリームを二つに割って食べました。 3d0a6e6e-748a-45f8-a1cb-e1523c104d4c
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