第1章 おぎんこぎん

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お母さんはお腹が大きくなるにしたがって、日に日に、おぎんが疎ましくなってゆくようでした。おぎんのパンツだけ洗わないで、汚れたまま畳んでチェストに戻したり、おぎんが一人でお風呂に入ると、わざと外から鍵をかけてお風呂場から出られなくしたりしました。一度は、おぎんの水筒に、腐った花瓶の水を流し入れているのを、こぎんが見つけて、そうっと中身を捨てて、きれいな水に変えておきました。そうでなくてもお母さんは、おぎんの水筒には、ぬるい水しか入れてやりません。こぎんには、冷たく香ばしい麦茶を入れてやるのに。 お父さんは長距離トラックの仕事をしていて、一度家を出たら3,4日は帰らない。お母さんは、言葉も態度も変えないで上手に隠していましたから、お父さんは何にも気づいていないのです。 おぎん自身は、気づいているのか、いないのか…。 あまり自分の考えをはっきり話さない子でしたから。 ただ、大きな黒目勝ちな垂れ目で、人の顔をじいとっと見るような子でした。
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