宇宙からの侵略者

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宇宙からの侵略者

青空の雲を切り裂き、突如として現れた円盤状のロケットらしき物体は、ゆっくりと郊外の広場に野原に着陸した。 もちろん地球に住む住民たちは大騒ぎ。 「大変だ!宇宙から来た侵略者だ」 「早く警察、いや軍隊に知らせろ! それにテレビ、新聞社などのマスコミにもだ!」 その言葉通り、数分後に警察、軍隊、そしてマスコミ関係者達が山のように押し寄せ、野原の周りをぐるりと取り囲んだ。 「…ご覧下さい!銀色に輝く謎の飛行物体は野原に着陸したまま依然として何も動きを見せていません!果たしてこれは地球に対する侵略の前触れなのでしょうか……」 何社ものテレビ局アナウンサーがカメラの前でそう騒ぎ立てていた。 人間は未知のものをその目にした時、とてつもない恐怖をその身に抱く。 それは全ての人間皆、例外ではなかった。 しかし、不安と恐怖に押し潰されそうになりながらも勇敢な軍隊の若い兵士達は銃やミサイルを構え、ねらいを円盤へ集中させていた。 とても長い時間、膠着(こうちゃく)状態が続いていた。 しかし、突然その静寂の時を円盤が破った。 円盤は再び静かに離陸、そして上昇し空の彼方へとどこへともなく去っていった。 警官や若い兵士、そしてアナウンサーや全世界のテレビを見ていた人間達はホッとため息をつき、胸を撫で下ろした。 「…円盤状の謎物体は我々になんの危害を加える事なく去りました!繰り返します!円盤は去りました!」 アナウンサーがテレビの前の人間達に危機は去ったと身振り手振りで必死に伝えている。 新聞記者達もこの騒動をすぐに記事にし、全世界に号外としてばらまいた。 ……地球は救われたのだ。 皆その事を叫び、夜になると宴を開いて酒を浴びるほど飲んでいた。 しかし、翌日になると皆は気付く事になる。 この騒動は終わりではなく、ここからが始まりであると。 翌日の朝、円盤状の飛行物体がまた野原に着陸したのだ。 すでに去ったと思われていた脅威が再び地球にやってきたのだ。 世界中の人々は再び大パニックとなり、警察や軍隊の出動を要請、遅れて到着したマスコミ関係者も含めてぐるりと野原を取り囲んだ。 「再び円盤が昨日に引き続き、同じ野原に着陸しました!今度こそ地球を侵略しにやってきたのでしょうか……」 各社アナウンサー達もカメラの前で必死に叫んでいる。 そのうち兵士達が配置につき、銃やロケットのねらいを円盤へ合わせた。 まるで昨日のリプレイを見ているかのようである。 そしてそのうち円盤も苦労してやってきた警察や軍隊、そしてマスコミ達を嘲笑うかのように静かに離陸、上昇し、空の彼方は消えて行った。 これも昨日とまるで同じだ。 しかし、地球の危機が再び去ったのは事実なので、新聞社達は号外を世界にばら撒き、ほかの人々は皆、浮かれて酒を飲み、宴を開く。 しかし、また次の日も円盤は野原へ着陸した。 そしてその次の日も、次の日も……。 その度に警察や軍隊は出動、マスコミ達も押し寄せる。 しかし円盤はこちらに対して何も危害を加える事なく地球から去っていく。 そのうち警察官や軍隊の兵士達、そしてマスコミ関係者達は馬鹿らしい気持ちになってきた。 どんなに素早く駆けつけても、結局は何も起こらないのだ。 ならば我々は何の為にこんなに必死になっているのだ? 円盤が地球へやってき始めてから約3年が経った頃。 だんだん彼等が現場に到着するスピードも遅くなっていき、5年も過ぎると円盤が飛来しても誰も駆けつけなくなっていた。 ……ただでさえ人間達が世界中で悪さをしているのだ。 ……何もしてこない円盤になんか構っていられるか。 ……「俺たちから徴収している税金を無駄に使うな」とデモも起きているくらいだ。 ……こんな事で必死で働いているはずの我らが批判されるなど阿呆らしい。 もう世界は円盤などに興味を示してなどいなかった。 非日常が日常に変わるのは一瞬だ。 この事を人々は普段「慣れ」だと言っている。 なんとも恐ろしい事だ。 人間達はいつの間にか自分の考え方や価値観が少しづつおかしくなっている事に誰も気付きやしない。 しかしいずれ世界はあの円盤が侵略者だったと気付く事になる。 もっとも、それは何万もの円盤達が地球へ飛来し、街を焼きつくような攻撃を開始した後の話になるのだが。
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