月(仮名)が輝いている

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 丸みを帯びた黄色い穴凹が、初秋の夜空に幾つも浮かんでいる。それはまるで、日本神話に登場する伝説の大蛇"ヤマタノオロチ"の眼に睨まれているようにも見えた。  何とも恐ろしい夜だなと思いつつ、俺は近くに置いてあった岩棚に腰を下ろして、Tシャツの左ポケットに仕舞ってある皺くちゃの煙草とジッポーライターを取り出した。  しゅぼっ  小気味良い発火石の摩擦音が響く。同時に、秋の涼風がさわさわと頬を掠める。気持ち良い。  遠くの方では微か賑やかにも音楽が流れている。何処かで"ヤマタノオロチ鎮魂祭"か何かを催しているのかもしれない。  「んー......。月は普通、一つだもんなぁ」  空にまん丸お月様が有り余るほど映写されていること以外は、至って平凡な夜。  「......深く考えなくても、まぁいいか」  その夜の中、俺は独り紫煙を燻らす。秋の香ばしい匂いの中にアメスピの独特な薫香がふんわりと混じり合う。こういう、夏と秋の境い目の雰囲気は、割と好きだ。  何となく "Eric clapton" を聴きたくなってくる。
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