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煙の行方を目で追いながら、俺はそのまま、無自覚のうちに物思いに沈み始めていた。
秋の匂いは、やはり罪深い。香ると、睡眠薬を飲んだ後のように、頭がぼんやりとしてくる。
「ある意味、"魔薬"だな」
呟いてから、俺は煙草の白いディスタンスが短くなっていることに気が付いた。先端に灯る細い火を、岩肌に浮いた夜露に擦って消す。
ついに一服を終えた俺は、不意に寝そべりたくなって、目の先に広がる芝生へ飛び込んだ。
「んぁぁ、気持ちいぃぃ...!」
そして空を見上げて、満天の満月を眺める。じっと、空に浮かんだ黄色い丸を見つめていると、目蓋がだんだん重たくなってくる。
このまま、寝てしまおうかな。
と、少しだけ思ったけれど。
流石にこの状態で寝るのは無防備過ぎではあったので、仕方なしに身を起こして、眠気覚ましにもう一本、追いタバコを口に咥える事にした。
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