月(仮名)が輝いている

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 「えっ......」  突如、俺の喉の、奥のその奥の方から、わずかな悲鳴が聞こえた。余りにもカラカラに嗄れた声だったので、初めは自分の出したものだとは見当付かなかった。  ただ、吃驚仰天した。  視線の先。白に包まれたウサギがこちらにフリフリ手を振っていたからだ。  メスのウサギ、だろうか。  思わず煙草を、口から垂らしてしまう。芝生の上で、アメスピがぴょんぴょん飛び跳ねる。  「ウサギ...じゃん......」  野生のウサギは生まれて初めて見たので、感動というよりもむしろ驚きのパトスが勝った。スマホで写真を撮ろうとしたけれど、ライトで脅かすのも悪いと思ったので辞めてあげた。  そのウサギは、ぴっと背筋を伸ばして、今度は俺に向けて艶めかしく投げキッスをした。
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