月(仮名)が輝いている

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 そわそわと、扇情的にも身体をくねらせながら白ウサギは執拗に俺を誘う。なんだ、やっぱり発情しているんじゃないか。  『ココに居ないで、向こうで飲もうよ』  そう言わんばかりに、ウサギは柔らかな前足を駆使して俺の太ももをツンツン攻撃してくる。  「俺なんかで、良いの...?」  余りにも自信がない自分に、心ならずも渇いた笑いを漏らしてしまった。  ......まぁ、それもそうだ。  仕事柄出会いも無く、彼女も三年ほど居ない俺なんて、女性の扱い方をとうに忘れてしまっていても当然だろう。  最後に行った合コンでは、良い所まで進展したけれど、向こうはただのヤリ目で、お付き合いを申し込んだ時点でバッサリ切られてしまった。  その件で完全に心が折られて、今世結婚は諦めようと誓いを立てながら夜の街をふらふらと歩いていたら、いつの間にかこの"新しい世界"へと踏み込んでしまっていたのだ。    満月が数多も浮かぶ、不思議な世界。どこか儚いけれど、明るくて賑やかな世界。
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