月(仮名)が輝いている

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 そんな世界の中心で、目の前の白ウサギは耳と尻尾をユラユラ動かしながら、興味津々に俺を見つめている。  『貴方の事を知ってみたい』  『私と一緒に踊りませんか?』  よくよく考えてみれば、俺は人間で、相手はウサギ。そんなラブロマンスなんて、果たして存在して良いものだろうか。  俺は一呼吸置いて思考する。さらに思考を巡らせるために天を仰いでみると、満月は俺たちの知らない間にぐるぐると回り始めていた。自転でも、公転でもない、ただの回転運動。こんな状況では、まともな考えなんてできやしない。  「一時の気の迷いで誘っているのなら、後悔すると思うけど......?」  女性を信用できなくなってしまった自分は、ウサギ相手でもあらぬ邪推をしてしまう。  徐々に、男のプライドが薄まっていく。
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