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◇
士官学校の中庭に打ち立てられている掲示板には、先週行われた筆記試験の成績結果が貼り出されていた。中庭は石積みの回廊で、ぐるりと囲まれた四角い空間である。
「ほおー、今回の定期試験の首座はリーザ・マリエステルだぜ」
「先月も確か彼女だったよな。どうしたんだよ。“提督”ヴィラード・ジャーヴィス閣下?」
同期のクラスメイトに肩を小突かれながら、私は拳を握りしめ、無機質な印刷の文字を見つめていた。
その名前は95期生トップの座から私を二ヶ月連続で蹴落としたのだ。
たかが試験、といわれるかもしれない。しかし私には死活問題だ。
トップになれば報奨金が15万リュールもらえるが、二番目だと7万リュールに下がってしまう。毎月の学費を払えば、僅かしか手元に残らない額なのだ。
憂鬱だった。
これで二ヶ月間朝食はパンケーキを食べなければならない。
願わくは早く訓練航海に出たかった。そうすれば三食ついてきて、おまけに航海日数に応じた給金が振り込まれるのに。
まだ半年も先というのが恨めしい……。
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