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「どうしてわかったのー? 私、ひとっ言も『提督』のこと、言ってないはずだけど」
シャインは懐から小振りの銀時計を取り出した。
何気ない仕種で蓋を開け、時刻を確認する。
「今……20時30分を過ぎました。俺とホープさんが店に来たのは丁度一時間前の19時30分」
「それが、どうかした?」
リーザは自分のグラスに手を伸ばし、残っていた酒を一気に飲んだ。
一時間経ったのなら丁度良い。
十分飲んで食べたし、シャインに妙なことをこれ以上突っ込まれないうちに帰った方がいい。絶対に。
「あら。もうそんな時間だったのね。じゃ、私そろそろ帰るわ」
リーザは席を立とうとした。
「あ、リーザさんまで。門限か何かがあるんですか?」
リーザはシャインのその一言で思わず身を強ばらせた。
「門限? いえ、そういうわけじゃ……」
「じゃあ、もう少し付き合って下さってもいいでしょう?」
シャインは机の上で両手を組み、意味ありげな微笑を浮かべながら口を開いた。
「ジャーヴィス副長みたいに門限がないなら、後少しだけ。なんか……一人でいると気が滅入ってしまいそうになるんです」
「……」
リーザは酒を飲んだ人間の反応として、大まかに二種類ある事を知っていた。
一つは陽気になり饒舌になること。
そしてもう一つは飲めば飲む程陰気になっていく人。
シャインは最初は前者で、酒が入ると後者になる複合タイプだ。
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