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◆【第1章】ジャーヴィス副長ご乱心?
エルシーア近海。
いつもの「使い走り」任務を終えて、アスラトルへ帰港するロワールハイネス号の後部甲板にて。水兵たちを集めてジャーヴィスが立っている。
ジャーヴィスの顔は緊張しているのか、その表情は氷のように固く青ざめていた。それにも増して、水兵たちの顔も納得がいかないというように不満げな表情である。自分たちから発言すれば反逆罪に問われることもあるので、彼らを代表して、航海長シルフィードがジャーヴィスに訊ねた。
「今、何て仰ったんですかい?」
ジャーヴィスは鋭い青い瞳を細め、胸の前で両腕を組んだ。まもなく正午になるので、天頂にかかる太陽の光がじりじりと甲板を焼き付けている。
「何度でも言う。しばらくの間、私がロワールハイネス号の艦長を務める」
「一体どういうことなんですか? 突然そんなこと言い出して? グラヴェール艦長に何かあったんですか?」
ざわつく水兵達を見るジャーヴィスの青い瞳が、『グラヴェール艦長』という名前で一瞬空を仰いだ。
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