番外編【1】ティーカップとパンケーキ

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 人が増えてきたので、私は複雑な思いを胸に掲示板から離れた。  そのときだ。回廊の前方で、彼女――リーザ・マリエステルの後ろ姿が見えたのは。  すらりとした若木のような肢体に、私と同じ灰色の制服を着て、結われることなく腰まで伸ばした艶やかな黒髪が揺れている。  両手に青い包装紙でくるまれた箱を抱えたリーザの前には、92期生の緑の制服を来た四人の男子生徒が、その行く手をふさぐように立っていた。  ネクタイをゆるめ、制服の上着のボタンをかけることなく着崩した、実に不愉快極まりない連中。  四人のうち真ん中の濃い金髪頭と、その左隣にいる青白い顔をした、プラチナブロンドの生徒は無精髭を生やしっぱなしだ。  私は嫌悪感で胸が一杯になった。  誇り高き王立海軍の士官は、常に紳士であらねばならない。  92期生は20才。だが彼等はもう少し年上のようだ。  毎年必ずいるのだ。卒業試験をクリアできず留年している連中が。  金持ちの子供なら、卒業と共に与えられる少尉候補生の地位を買うことによって、大抵ここを出て行くのだが。
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