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「そういえば僕、今日はまだ艦長のお姿をみてません。航海長は?」
航海長シルフィードの隣に立っていたクラウス士官候補生がぽつりと口を開いた。大男のシルフィードが呆けたような顔でクラウスを見下ろす。
「俺も見てないな。そう言われれば。もう昼前だっていうのに、今日は艦長、一度も甲板へ上がってきて……ねぇよな…?」
シルフィードが同意を求めるように周囲を見回した。
「ああ」
「俺も見てないです」
目が合った数人の水兵達がこくりと頷いた。それを確認したシルフィードは、垂れた緑の瞳を訝しげに細めながらジャーヴィスに再び問いかけてきた。
「ジャーヴィス副長が『艦長代理』を務めるのには、当然、正当な理由がおありでしょうね?」
シルフィードの口調にはトゲがあった。ロワールハイネス号の『艦長』を務めるとジャーヴィスが言ったのに、シルフィードは『艦長代理』と言い直したからだ。ジャーヴィスは無表情のまま目を伏せ頷いた。
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