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リーザは彼等と言い争っているようだった。
そして、どうも折り合いがつかなかったのか、彼女はきびすを返して私の方へ走ってきた。
「通して! お願い!」
彼女を追って四人組も走ってくる。
私はその意図を理解した。
目の前に来たリーザを隠すようにその背後につき、掲示板の前でごったがえしている生徒達の人込みにまぎれたのだ。
「こら! 通せ。邪魔だ!!」
背後から聞こえる罵声と共に、金髪頭の手が後ろから伸びてきたので、私は人込みにいるのを幸いに、肘鉄をさりげなく脇腹へ入れてやった。
「うがあっ!」
うめく男子生徒の声は、掲示板を見ようと集まった生徒達の喧噪にかき消された。
「こっちだ、行こう」
人込みから抜けた私はリーザに声をかけた。彼女は箱を大事そうに小脇に抱えたまま顔を上げ、ゆっくりうなずいた。
透き通った――それでいて情熱的な紅の瞳が私を見返していた。
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