お客様は一夜の恋人

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お客「あ~。スッキリした。ハル君、小腹空かない?いつもの飲み物と軽食注文して。」 空 「はい。ありがとうございまーす。」 電話で注文している時、お客さんが後ろから抱きついてきた。 注文を言い終わり、僕の身体に流れるお客さんの心音。 温かい。 お客「ハル君…絶対モテるでしょ?…男の人に。」 耳元でささやく少し低めの声。 空 「…そうでもないですよ…。…何も役に立たないですし。まだまだお客様を満足させられないですし。」 お客さんが僕の顔にすり寄って甘える。 お客「ま~た弱い所見せて…。…一生懸命なハル君、可愛いよ…。」 空 「フフフッ。…ありがとうございます…。」 最近解ってきたことがある。 ゲイの世界にも、ネコ(女役)、タチ(男役)が存在してる。 このお客さんは、ネコ。 しかも、ネコ専(女役しかなれない男を言う)。 僕も薄々だけど、そのネコ専なんだろうなぁ。 どちらかと言うと攻めるより受け身だし。 個室のドアからコンコンという音が聞こえた。 空 「お客様、届きましたよ。」 お客「離れたくない~。このまま抱きしめたまま食べるー!」 空 「…もぅ~。…解りました。じゃあ、お口開けて~?」 お客「やった~~~♪♪」 これも、勉強。 これも、経験。 一夜で稼げる金額は、そんなに多くないけど。 充実感は、凄くあるから…。 孤児院にも毎月決まった額を送ってるし、何よりここのお店の二階が僕ら従業員の家になってて、家賃とか光熱費とかかからないのが助かる。 ほとんどプライバシーなんて無いけど、皆でワイワイ色々な話したり、時には、喧嘩したり、相談しあったり。 …………昔の事とか話したり。 自分と同じ経験してる人は、何気に多くて…。 僕だけが未練タラタラなんじゃないんだなぁ。 皆も同じように引きずってるんだ。 今じゃ、一人で悲しんで苦しんでたのがバカみたい。って、思えるようになってきたんだ……。
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