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じぃ~っと見ていたら大翔君が目を覚ました。
大翔「…ぁ…俺…寝てたんだな…。」
虚ろな目でまだ完全には、起きていないみたい。
そんなボーッとしてる大翔君も好きでつい本音が…。
空 「…もう少し寝てても良かったよ?」
それを聞いた大翔君が少しイラっとしながら僕に突っ掛かる。
大翔「俺の寝顔見て喜ぶ男なんて、空ぐらいだろーが。」
…………あらら。
そうだけど…。
空 「男から見ても大翔君って、凄~く憧れの存在だよー?女の子からモテモテだしさぁ~。羨ましいよー。寝顔までカッコいいなんてさぁ~。」
ここまで言えば変に捉えないよね?
大翔「…俺別に普通に寝てるだけなんだけど?憧れとか羨ましいとか勝手に思い込んでるだけだろ。…馬鹿馬鹿しい…。」
………あー、イヤミっぽいねー。それー。
まぁ、大翔君らしい言い分だから僕は、何とも思わないけどねー。
本題に入る僕。
空 「放課後残れって、何か相談とか?」
大翔君の目は、さっきのイライラとは、違う目をして僕の顔を見る。
そして視線を少し下げて話し出した。
大翔「…俺さ…母子家庭なんだよ……。」
それは、前にクラスの友達からちょっと聞いてた。
僕は、うん。と合図ちをしながら大翔君が話したい事を話せるように、あえて何も言わなかった。
大翔「…小さい時に親が離婚したんだけど、ずっと理由が解んなくてさぁ…。母親も飲み屋で働いてて、良く店の客家に連れ込んだりして。…今でも…俺は、父親に捨てられたんだ。…って……。」
……………そんな事ないよ。
だって、大翔君は、お母さん傍にいるでしょ?
お父さんだって生きてるなら、いつか会えるかもよ?
………僕は、自分の親の顔も名前も解んない。
………でも、大翔君が「捨てられたんだ。」って思う気持ちは………。
空 「……解るよ……大翔君の気持ち…。」
全く同じ境遇でも無い大翔君に近づきたくて……。
自分勝手な言い方をした僕。
大翔「…ごめん…。空なら、なんか解ってくれそうな気したから…。」
ごめんね。
空 「大翔君らしくないよ~!僕に謝るなんて!フフ。」
僕は、笑った。
大翔君が悲しむ顔なんて見たくないよ。
いつでも誰かを引っ張って頼られてる大翔君を見てるのが僕は、凄く嬉しくて幸せだから。
高校を卒業したら友達でいても、なかなか会うことは少なくなる。
社会人になって仕事に就く頃には、きっと大翔君は…………。
誰かと恋をするんだろう………。
このまま友達のままで良いのか。
一発勝負の賭けに出るか。
淡々と流れる季節の中。
僕は、最終的に一発勝負の賭けに出たんだ。
そして、その賭けに僕は、敗北した。
大翔君と会う事は、もう出来ない。
僕から触れる事は、一度も無いまま…。
触ってたら賭けに敗北は、無かったかも…………。
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