完全なる敗北

3/3
前へ
/621ページ
次へ
じぃ~っと見ていたら大翔君が目を覚ました。 大翔「…ぁ…俺…寝てたんだな…。」 虚ろな目でまだ完全には、起きていないみたい。 そんなボーッとしてる大翔君も好きでつい本音が…。 空 「…もう少し寝てても良かったよ?」 それを聞いた大翔君が少しイラっとしながら僕に突っ掛かる。 大翔「俺の寝顔見て喜ぶ男なんて、空ぐらいだろーが。」 …………あらら。 そうだけど…。 空 「男から見ても大翔君って、凄~く憧れの存在だよー?女の子からモテモテだしさぁ~。羨ましいよー。寝顔までカッコいいなんてさぁ~。」 ここまで言えば変に捉えないよね? 大翔「…俺別に普通に寝てるだけなんだけど?憧れとか羨ましいとか勝手に思い込んでるだけだろ。…馬鹿馬鹿しい…。」 ………あー、イヤミっぽいねー。それー。 まぁ、大翔君らしい言い分だから僕は、何とも思わないけどねー。 本題に入る僕。 空 「放課後残れって、何か相談とか?」 大翔君の目は、さっきのイライラとは、違う目をして僕の顔を見る。 そして視線を少し下げて話し出した。 大翔「…俺さ…母子家庭なんだよ……。」 それは、前にクラスの友達からちょっと聞いてた。 僕は、うん。と合図ちをしながら大翔君が話したい事を話せるように、あえて何も言わなかった。 大翔「…小さい時に親が離婚したんだけど、ずっと理由が解んなくてさぁ…。母親も飲み屋で働いてて、良く店の客家に連れ込んだりして。…今でも…俺は、父親に捨てられたんだ。…って……。」 ……………そんな事ないよ。 だって、大翔君は、お母さん傍にいるでしょ? お父さんだって生きてるなら、いつか会えるかもよ? ………僕は、自分の親の顔も名前も解んない。 ………でも、大翔君が「捨てられたんだ。」って思う気持ちは………。 空 「……解るよ……大翔君の気持ち…。」 全く同じ境遇でも無い大翔君に近づきたくて……。 自分勝手な言い方をした僕。 大翔「…ごめん…。空なら、なんか解ってくれそうな気したから…。」 ごめんね。 空 「大翔君らしくないよ~!僕に謝るなんて!フフ。」 僕は、笑った。 大翔君が悲しむ顔なんて見たくないよ。 いつでも誰かを引っ張って頼られてる大翔君を見てるのが僕は、凄く嬉しくて幸せだから。 高校を卒業したら友達でいても、なかなか会うことは少なくなる。 社会人になって仕事に就く頃には、きっと大翔君は…………。 誰かと恋をするんだろう………。 このまま友達のままで良いのか。 一発勝負の賭けに出るか。 淡々と流れる季節の中。 僕は、最終的に一発勝負の賭けに出たんだ。 そして、その賭けに僕は、敗北した。 大翔君と会う事は、もう出来ない。 僕から触れる事は、一度も無いまま…。 触ってたら賭けに敗北は、無かったかも…………。
/621ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加