満月を飲む

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満月を飲む

 今夜は良く晴れて空に満月が浮かんでいる。  庭のテーブルに用意したのは満月のようなアップルパイと、香り高い紅茶。主と友人が席に着いたところで、パイを三等分に切り分けて渡す。  嬉しそうにパイを食べる主を見て、真っ赤な林檎を思い浮かべる。いつか何かで知った知恵の実というのは、林檎のことなのだろうか。  もしそうなのだとしたら、こうして林檎を分け合って食べている僕達のことを旧き神はどう思うのだろう。  手元のティーカップを見ると、紅茶の上に満月が浮かんでいる。ただの想像に頭を悩ませるのは馬鹿らしい。僕はパイをひとくち囓って紅茶ごと月を飲んだ。  いまこうやって、月明かりの下でのお茶会を、三人で楽しむことの方が重要だ。
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