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「二人とも、今日は真面目な話がある」
扉を開けるやいなや、美術部の部長である兒玉春人先輩が、神妙な顔つきで私たちに告げた。
「ど、どうしたんですか」
なにか悪いことでもおきたのかな。
からだがすこし緊張する。
荷物を置いて、蘭と椅子に腰掛けると、春人先輩が悲しげな声で話を切り出した。
「流石に入部希望者が少なすぎて、同好会に降格しそうなんだ……」
こ、降格。
春人先輩の表情を見るに、相当深刻な事態のようだ。
「同好会になると都合の悪いことでもあるんですか?」
蘭が心配そうに聞いた。
「まず、美術室が予約できなくなる」
「えぇ!?」
「それはマズいわ……」
どうやら『同好会』に降格になると、美術室・音楽室・パソコン室のような特別教室の予約が出来なくなってしまうらしい。
絵の具を洗うための水道や、キャンバスを立てかけるイーゼルがある美術室の存在なくして、自由に絵を描くのは結構厳しい。
「ど、どうしたら、部活動を維持できるんですか……?」
「六月までに部員が五名以上になれば存続だそうだ」
今は、蘭、春人先輩、私の三人だから、あと二人部員が必要なんだ。
全く人気がないらしいこの美術部。あと一ヶ月で二人、増やせるのかな。
「そこで、提案がある」
春人先輩がおもむろに立ち上がった。
蘭と私はごくりと唾を飲む。
「絵の展示をしよう!」
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