第二話

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○  陸名くんと会話をしてから、驚くほど絵の作業が進んだ。  最後の一枚は、自主練習をするダンサーの絵。  自由にからだをストレッチしていた陸名くんを脳裏に浮かべたら、描きたい気持ちがどんどん強まって、気がつけば完成していた。  どこまでも柔らかい身体や、重力を感じさせないような腕の伸び。  夕方のオレンジがかった柔らかい光が、その身体を照らす。  いつも写真を参考にしながら描くけど、初めて、何も見ずに完成させた絵。 「できた……!」  思わず座っていた椅子から立ち上がる。 「真彩、完成しちゃったの!?」  絵筆から手を離して、蘭が驚いた声をあげる。  その奥から、展示用の額を選んでいた春人先輩がウキウキした顔であらわれた。 「見せて見せて〜」  目を輝かせながらこちらに歩いてくる二人。  ちょっと恥ずかしいような、でも早く見てほしいような。  キャンバスの前までくると、蘭がほうっと吐息を漏らす。 「真彩の絵のなかで、一番好きかも……」 「とても良いね……!」 「あ、ありがとうございます」  よかった。う、嬉しい。  蘭と春人先輩の素直な第一声に、ほっとする。 「これは、愛ね。真彩」  絵を見てうっとりしながら蘭が言う。 「あ、あい?!」 「ふふ。陸名くんそっくりですもの」  蘭の美しい笑顔が私に向けられる。  微笑ましそうな目でこっちを見るから、なんだかすごく恥ずかしい。 「そ、そんなに似てるかな……!?」  顔が熱くなってきて、顔を伏せずにはいられない。  たしかに、何も見ずに、陸名くんだけを頭のなかに浮かべて描いていたから、似てしまったかもしれない。  でも、愛って、どういう意味なの。
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