第二話

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「似てるのに気がつかないほど集中していたんだね。絵への“愛”、とも言えるねえ」  春人先輩もにこにこしながら私に語りかける。  そうか。絵への愛。  でも、蘭が言っているのはもしかして、陸名くんへの——“愛”?  鼓動が早くなって、ますます顔の温度が上がっていく。 「おととい、陸名くんと会ったのよね。真彩」 「う、うん。蘭が日直の仕事でいなくなっちゃったあと」 「へえ、そうだったのか。どんな話したんだい?」  春人先輩が近くの椅子に座って、好奇心たっぷりに目を輝かせている。 「えっと……それは……」 「真彩のこと、『もっと知りたい』だそうですよ」  恥ずかしさで口をもごもごさせているうちに、蘭が言ってしまった。 「ちょ、ちょっと、蘭!」  また恥ずかしさがヒートアップする。 「それで真彩も、陸名くんのことをもっと知りたいって思ったのよね」  うっとりとした表情で、蘭が微笑む。  たしかに私も、彼のことをもっと知りたいって、思った。 「……うん」  こくりと頷く。  黙っていた春人先輩が、急に深くため息をついた。 「はあ……素敵だなあ」 「とっても素敵ですわ」  うっとりしたトーンで頷いている二人。 「さらに絵まで完成させちゃうなんて、素晴らしいよ」 「これが“愛”ですわね」  蘭はまたじっと絵をみつめて、にっこりと微笑んでいる。 「何回も言ってるけど、“愛”って、どういう意味なの?」  聞いてみると、蘭は一瞬きょとんとした顔をしてから、うふふといつもの顔で笑った。 「さて。私もラストスパート、取りかからなくちゃね」 「えっ。え!?」 「真彩ちゃん、こっちで額縁選べるよ」 「は、はい!」  蘭ははっきりとした返事をしないまま自分の席に戻る。  私は春人先輩に額縁の山を見せられて、結局、蘭のいう“愛”がなんなのかは、分からなかった。  でも、心の片隅では、陸名くんを初めて見た時から、わかっていた。  あたたかな、ある感情が芽生えていたことは。
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