第二話

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「陸名くん、私、もう絵を描くことやめないよ」  陸名くんがはっと顔をあげる。  前髪がかすかに揺れて、表情がゆるんだ。 「私は、自分が描きたい絵を描き続ける。そのために、今回の展示を一枚減らしてもらったの」  あの絵を取り下げたのは、自分の未熟さを理解して、前に進むための一歩。  陸名くんの輝きを、いつか自分の絵で、表現できるようになるための。 「そっか……」  ふっと、腕を掴む力が抜けて、陸名くんの表情がやわらかくなった。  ほっとしたように息を吐いて、陸名くんはまた私を見つめる。 「おれ、水口に描いてもらえるようなダンサーに、なる」  陸名くんの瞳が、廊下から差し込む光に透けている。  元々色素の薄い茶色の瞳が、黄金色のように見える。  すごく、綺麗だな。 「私も、陸名くんの輝きをちゃんと描けるように、がんばる」  腕を掴んだ陸名くんの手に、そっと手を重ねた。  まるでなにかの宣誓の握手をするみたいに、私たちは手を繋いで頷きあった。  触れ合った手は、心の奥をどきどきと震わせていた。  ああ。私は、絵を描くこととと同じくらい、彼に惹かれている。
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