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小さな頃から絵を描くのが好きだった。
壁や床は落書きだらけだったけど、両親はそんな私に好きなだけ絵を描かせてくれた。
そんな私が本気で絵を描きたいと思ったのは、小学四年生の時だ。
たまたま見に行ったバレエの公演に、私は心を打たれた。
スパンコールでつつまれたきらめく衣装。ふわふわと靡くチュチュ。眩しいほどの照明。
そしてなにより、しなやかに伸びる手足や、宙を舞うバレエダンサーのからだの動き。
目に焼き付けた光景を、どうにかして記録しておきたかった。だから私は、頭の中にあるバレエダンサーのイメージを本気で描いた。
するとその絵は学校で金賞を取り、その後全国のコンクールでも金賞を取った。
私は賞には微塵も興味はなかった。
ただ、あの美しい動きを、いつまでも記憶していたいと思っただけ。
気付けば毎年コンクールに入賞していた私は、美術部の有名な中学校に推薦で入学した。
絵を描き続けられるのなら、どこでもよかったから。
でも、そこでは沢山の生徒が競争心にあふれていた。好きな絵を描くことよりも、『他人より上手い絵』を描くことが大事だった。
初めは自由に描いていた絵も、先生や、同級生たちの視線が気になって、どんどん窮屈になっていく。
中学三年生になったころには、私はすっかり自分が好きな絵を描けなくなった。
そして私は美術部を辞めた。
このままじゃ、絵を描くことを嫌いになってしまいそうで。
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