第三話

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「……え、まじ? 本気で? 美術部?」  まるで美術部を下に見ているみたいな言い方だ。  火野くんはぎゅっと拳を握って俯いたまま、返事をしない。  私の心の奥に、チリチリと黒いなにかが込み上げてくる。きっと火野くんもその感情と戦っている。 「なんでだよ、バスケ続けてりゃいいのによー。つーかお前そんなに絵上手かったか?」  目の前の男の子が、はは、と鼻で笑いながら言い放つ。  この人は、何にも火野くんのことを知らないんだ。  絵を描くのが好きな火野くんのことは、何も。 「あなたは知らないと思うけど、火野くんはすごく絵が上手です! あなたが思ってるより、何倍も!!」  気がついたら叫んでいた。  無人の廊下に声がこだまして、急に顔が熱くなってくる。  火野くんは驚いたように目を丸くして、パッとこっちを見た。 「え、あ……」  目の前の男の子は、私が怒鳴ると思っていなかったのか、ポカンと口を開けている。 「行こう、火野くん!」  これ以上赤い顔を見られたくなかったのもあって、私は火野くんの腕をほぼ無理やりに掴んで、廊下を歩き始めた。 「お、おう……!」  火野くんも足早についてくる。  心臓はまだバクバクと脈打っていた。
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