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第四話
美術部には地下に倉庫があって、古いキャンバスが眠っているらしい。
春人先輩に頼まれ、蘭、火野くん、私の一年生三人組は、倉庫に迷い込んでいた。
「地下体育館の裏に、こんなところがあったんだね……」
今は梅雨真っ盛りの六月末。
地下の倉庫は、じめっとしていて薄暗い。
その広い空間は部活ごとにスペースが区切られている。
舞台系の部活のスペースには、衣装がたくさん並んでいた。
運動部のスペースにはグローブやゼッケンなどが置かれており、結構頻繁に使われているようだった。
「ここが美術部か」
火野くんが美術部のスペースを発見した。
色々なサイズのキャンバスが、本棚のようにずらりと並べられている。
「これ、全部持っていくのかしら」
蘭が小さめのキャンバスを引き抜くと、一気に埃が舞った。
「うわっ」
「ずっと触ってないんじゃない、ここ!」
ケホケホと咳をしながら、蘭が悲鳴をあげる。
「たしか地下倉庫って掃除が義務になってるんだっけ?」
痒くなってきた目をこすりながら聞いた。
「そのはずなんだけどなぁ……」
火野くんが苦笑いをしながら、服についた埃を払う。
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