106人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「もしかして、」
「……?」
「サキ、やきもち?」
「やき……もち?」
「え、やべっ……嬉しい」
「……え?え?」
やきもち?
サクが他の人に好かれていて、妬いた……?
……わーっ!うん、はい、そうみたいです。
思い切り目が泳いだ。
あの人の気持ちが切ない、なんていい人ぶっていたけれど、単なる自分のヤキモチだった!
顔が赤くなると同時に、サクにぎゅっと抱きしめられていて。
大きな手が後頭部をゆっくり撫で下ろした。
「俺、あの人にちゃんと言っただろ?“俺がサキを見つけたんだ”って」
「っ、」
「近くに居た人じゃなくて、俺は、遠くに居たサキを見つけた。俺が、サキの事を好きなの。だからサキ以外に好かれても意味がない」
「……私も好きだよ」
抱きしめる力が強くなって、引き寄せられて、足の間にすっぽり入ってしまった。
ぎゅっとされて、頬に当たるサクの胸からどくどくと強い音が響く。
私の心臓もバクバクと煩いから、もうどちらの音かはわからないし、サクの気持ちに、自分のつまらない嫉妬なんてどこかへ飛んで行って。
ただただ、どくどくと鳴る音を聞くだけだ。
「俺だって、サキの過去とか、サキがたまに会話する男とか、嫉妬し出したら切りがないから」
「っ、サク」
「サキ。……俺のものに……していい?」
覗き込む熱を帯びた瞳に、瞬きで頷いて。
顎を救い上げるサクの手も熱い。
徐々に深くなるキスに息継ぎすらままならなくて。
サクが私の名前を何度も呼んで、どんどん熱に浮かされて。
頭が、ぼーっとする。
「サキ」
ふわふわまどろんだ向こうから呼ばれて、漸く目を開けた。
腕枕をしたサクが微笑んで覗き込んでいて。
おでこにちゅっとキスをする。
「明日から……やばいな」
サクは大きな手で口元を一度覆って、覗き込んだ私の目元をするりと撫でた。
「実は俺もバイト先で顔が緩んでるって言われたから」
「……サクも?」
「ん。なんか、ますますやばそう。最近生き生きしてるって店長にも言われてるし……余計言われそうな気がする」
「私もきっと奏ちゃんに言われちゃうなぁ」
「……そのまえに、」
「うん?」
「明日、土曜だし、出かけない?」
「デート?」
「ははっ、デート。ショッピングでも映画でも、どこへでも」
「うん!じゃあ、どこに行こうか考えておく」
「待ち合わせは、どうする?」
「それなら、あそこ」
二人が出会った桜の木の下。
最初のコメントを投稿しよう!