それから

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「ヘイヘイヘーイ!そこのお二人さん!」 サクは、振り返ろうとした私の手を引っ張った。 「こらこら、サクちゃん!俺を無視するなって」 「…………」 無言で私の手を引き歩き続ける。 「あれー?一体誰のおかげで、」 「政宗!!」 マサムネ?? 勢いよく振り返ったサクは、後ろから声をかけるその人を睨みつけた。 マサムネって、政宗?伊達の?政宗? 一瞬亜季の顔が頭に浮かんだ。 いや、亜季は今、沖田様推しだった。 見上げたその人は、長めの髪と服装がすごくおしゃれで、サクといつも一緒に居る人だ。 武士みたいな名前とのギャップがすごいなぁ、なんて思いながら見上げていたら、私に視線を落としたその人は神妙に一度頷いて見せた。 「言いたいことはよくわかる。けどさ、伊達の政宗さんが今の時代を生きていたとしたら、きっと俺みたいだったよ」 にこって笑って。 ……確かに、伊達の政宗さんはオシャレさんなイメージがある。 「確かに」 「だろ?ってことで、よろしく!」 すっと出された手に握手をしようと伸ばした私の手は、サクが掴んだ。 「政宗。お前はまだ次の講義あるだろ。早く行けよ」 「なんだよー。握手くらい、いーだろー?自己紹介くらい、してもさー。これからは俺も会うことになるんだしぃ」 確かに、サクのお友達なら、会う事も多くなりそうだ。 そう思って頷きかけたところで、サクが掴んだ私の手を引いた。 「うるさい。俺だってまだ始まったばかりなんだから、お前はしばらく駄目だ」 「あー、そう。そうね。確かに、そうね。わかった。んじゃ、とりあえず俺は、次の講義に行ってきます」 手を振って去って行った後ろ姿に、隣でため息がする。 「アイツ居ること忘れてた」 「忘れてたの?」 だっていつも一緒にいる印象なのに。 ちょっと笑った私に視線を落として、サクは手を引くと歩き出す。 「……今の状況でいっぱいいっぱいだし」 ぽつりとつぶやくようにして言われた言葉に、私も頷く。 まだ付き合いだして、2時間経つ程度だ。 「サキ、今日はもう、講義ないでしょ?」 「うん」 「じゃあ……どこか寄って行かない?」 お互いまだ何も知らないことばかり。 「ゆっくりお茶でも飲みながら、サキの事、教えてほしい」 僅かに力の入った手を、私も握り返した。
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