それから

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大学から程近くにあるお洒落なカフェは、うちの学生に人気だ。 私も亜季とともに一度立ち寄ったことがある。 でも、大学生も3年目なのにその間にたった一度切りとは、華やかな大学生活とは言えないなぁなんて思うと、ちょっと苦笑が漏れた。 向かいに座り首を傾げたサクに、また一つ苦笑を漏らす。 「ここ、1度しか来たことないから……」 落ち着かなくてなんとなく座り直したら、サクは店内に視線を流してコクリと頷いた。 「俺も、実はあまり落ち着かない。アイツら……政宗によく引っ張られて何度か来たけど、まだ馴染めてない」 私が知っているサクのお友達は、とてもオシャレでかっこよくて可愛い。 こんなカフェにピッタリで、でもサクが馴染めていないというのも頷けた。 彼はそんな友人たちの輪の中で、一人だけ雰囲気が違っていて。 私はそこにとても惹かれたのだけれど。 「でもここしか思いつかなかった」 「うん。私、また来てみたいと思ってたから、嬉しい」 「そうか」 「うん、」 店内に流れる曲はゆったりとしたボサノバ。 少し掠れた女性の歌声が心地いい。 頼んだカプチーノにはラテアートが施されていて、ハートがぐるりと輪になっていた。 一口飲んで、ほっと息を吐く。 暫くお互い無言だったけれど、不思議ととても心地よかった。 時々じっと私を見つめる視線には慣れなくて、逃れるようにカップに口をつける。 そんな私を見て、サクは頬杖をつくと微笑んだ。 あぁ、かっこいい……。 ずっとちらちら遠くから見ていた横顔が、こっちを見て微笑んでいる。 3秒見つめるのが限界で、自分の視線が大きく揺れるのがわかった。 「今、なに考えた?」 楽しそうに目を細めて、問う。 何って、それは。 「……かっこいいなって、」 言い逃げのようにまたカップを持ち上げて、ほんの少し口をつけながら、ちらりと彼を覗き見した。 大きく目を見開いて、頬杖の手が口元を覆う。 「……あー、もう。……かわいい」 小さく呟かれた言葉がしっかり耳に届いてしまい、私の顔があっという間に赤くなるのが分かった。 よ、よかった。 両隣の席に誰もいなくて。 もしここに亜季が居たら、「甘ったるくて胸焼けする」と言うだろう。 いや、今までの私も言うと思う。 当事者は気づかない。 “二人の世界”とは、こういう事なんだと思う。
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