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ええと。うん?
「亜季……政宗くんと、知り合い?」
「…………顔を知っている程度だ」
「あ、ひでー!ちゃんとクラスメートだったっしょ!図書委員、一緒にやったじゃん!」
「記憶から抹殺した」
「あはははは!相変わらずー!」
「ムサシ、煩い!」
ムサシ?なんで?政宗ではないの?
サクに視線を送れば、彼もまた首を傾げてわからないようだ。
「俺をムサシと呼ぶくせにー。その名前で呼ぶのはクラスメートの証だぞー」
楽しそうな政宗くんとは打って変わって、亜季の眉間の皺がすごい。
「私は貴様のようなチャラいヤツとは関わりたくないんだ」
「またまたー」
私とサクを挟んで繰り広げられる会話を、やっぱりテニスの審判のように首を振って眺めていたのだけれど。
「……沖田様もチャラいのに」
ふと思ったまま口にしたら、亜季が「ガッ」と言ったまま固まってしまった。
政宗くんはきょとんと首を傾げて。
それから苦笑を漏らすとひらりと手を振る。
座席の上の方から彼を呼ぶ声が聞こえていた。
「俺ね、宮本なの。宮本政宗。よろしくねー」
そのまま階段を上がっていく政宗くんの後姿を目で追っていたら聞こえた声。
「……私の一つ下の弟は、佐々木小次郎という。ちなみにムサシと同じサッカー部だったんだ。剣道部にでも入っていれば良かったのにな」
亜季の言葉に思い切り噴出したのは、私とサク。
「存分に笑うがいい」
「っ、あははははっ!」
遠くを見つめながら呟く亜季に、また笑いが込み上げてくる。
「こんなことで笑えるとは、二人とも幸せだな」
ため息交じりの言葉に、私もサクも肩を揺らしながらもなんとか笑いを収めて。
亜季を見れば、彼女は苦笑を漏らして肩を持ち上げた。
「咲。笑いのツボが同じみたいでよかったな。そういうことは、意外と大事だと思うよ」
うん、そうだね。
同じことで笑えるのって、良い事だよね。
サクを見上げれば、コクリと頷いて、椅子の影で私の手をきゅっと握った。
「お二人さん……授業中はいちゃつくなよ?」
「亜季、な、なんでわかって、」
「咲の顔を見ればすぐわかる。わかりやすいからね」
「そこが特にサキの可愛いところ」
「青柳、貴様を認めよう」
「あざっす」
「え、亜季。サク?」
亜季は口の端を持ち上げ頷いて。
サクはもう一度私の手をきゅっと掴んだ。
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