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人がそれほど多くないカフェテリア。
2限目の外国語の講義が休講になり、私は亜季と時間をつぶしていた。
可愛い丸いテーブル席、向かいに座る亜季は、朝からずっと鼻歌交じりだ。
沖田様とどうにかなったらしい。
「青柳は同じ教科じゃなかったんだな」
「うん、サクは違うのとってたみたい」
「付き合いだしてからいつも一緒にいるから、てっきり一緒に休講なのかと思ってたよ」
確かに、付き合いだしたからは割といつも一緒にいる気がする。
だから、こうして違う講義の時なんかは、ちょっと寂しかったりして。
そんなことを想いながら時間をつぶして、カフェテリアは昼食をとるために徐々に人が集まってくる。
講義が終了する時間はまだ少しあったけれど、早く終わった人たちがぞろぞろと入ってきた。
「ねぇ、サク!サクってば!!行かないでよ」
彼を呼ぶ声が聞こえて、入り口へと顔を向けた。
サクの腕に女の子がしがみついている。
「え、」
私と亜季の声が重なった。
「こらこら、むっちゃん、放しなさい?」
「嫌よ!いつも私たち一緒だったじゃない!なんで、急に、」
政宗くんが女の子を引きはがそうとするけれど、彼女はしっかりサクの服を掴んでいる。
えっと、これは、ええと、
ぎゅっと胸が締め付けられて苦しい。
心音は徐々にうるさくなってきて、女の子が顔を上げたタイミングで目が合うと、ドクンと耳元で大きく鳴った。
つかつか目の前まで歩いてきて睨んでくる。
私はただただびっくりして、声が出なかった。
「あんた!!何なの!?急に現れてさ。サクはずっと私たちと一緒に居たのに!あんたが現れたせいで、サクは私たちのところに来なくなったじゃない!」
……どうしよう。
なにか言い返したいけど、言葉にならずに息を吸うばかりだ。
そもそも、私は急に現れたわけじゃないし。
1年生からちゃんと毎日ここに通ってきてましたし。
頭の中を駆け巡る言葉はやっぱり口から出てこなくて。
ただ目の前のこの人を見つめるばかりだ。
そんな私にイラついた彼女が一歩前に出た時、サクが手を伸ばして私を引き寄せた。
「いい加減にしろ。急に現れたんじゃない。“俺がサキを見つけた”んだ。俺が、サキに一目ぼれして、告白して、付き合う事になった。それに俺は、政宗と居たんであって、アンタといたつもりはない」
サクに背中を押されて、椅子に座る。
後ろで泣き崩れる彼女が「ずっと好きだったのに」と言った声が、耳に残った。
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