ふたり

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「サキ、昼飯まだでしょ?」 「あ、う、うん」 「行くよ」 食券を買って、昼食をとる。 サクはさっきの事などなかったように、いつも通りで。 私はというと、泣いていたあの人の言葉が頭から離れなくて。 その後一緒に受けた講義の間も全然集中できない。 『ずっと好きだったのに』 あの人はこれまで、サクと一緒のグループに居て、一緒に講義を受けて、一緒にお昼ご飯食べて、時には遊びに行ったこともあるかもしれない。 好きになって、一緒に過ごしてドキドキして。 そして、いつかは気持ちを伝えようとしていたのかもしれない。 好きな人と近くに居られることがすごく嬉しい事なのがよくわかるから。 切ない。 講義が終わって教室を出ると、サクは私の手を取った。 ずんずん歩きながら、ちらりと振り返るように私を見下ろした。 「今日、バイト、ないでしょ?」 「あ、うん」 「じゃあ、一緒に来て」 いつもの公園に入っていく。 でも、歩く速度を緩めずにどんどん歩いて、公園の反対側の出入り口から出てしまった。 そのまま歩いて5分ほど。 アパートの階段を上がって、ポケットから鍵を出す。 少し乱暴に開けられたドアに引き込まれて、部屋の中まで連れられると座らされた。 向かいにはサクが胡坐をかいて座って、私と距離を縮める。 そこで漸くサクの顔をしっかり見たら、少し怒った顔をしていた。 「なんでそんな顔してるの?」 聞いたのは、サク。 そんな顔って言ったって。 「なんでそんな悲しい顔、してる?」 「…………っ、」 悲しい顔というか、なんていうか。 目を伏せたら、膝に乗せた手をぎゅっとサクが握った。 暖かくて大きな手は力加減がちゃんとされていて、そのぬくもりにほっとして口を開いた。 「……あの人、サクの事、ずっと好きだったって」 「…………そうらしいね」 「ずっと近くに居て、嬉しかったんだろうなって……思って」 「…………俺は知らなかったけどね」 「急に、私と付き合いだしたから……あの人、告白、とか」 「サキ。じゃあ俺は……あの人に告白されればよかったの?」 「や……だ」 反射的に出た否定に、サクの手が一度ぎゅっと力を入れた。 「…………私だって」 「ん?」 「私だってずっと好きだったの。あの人は近くに居られたけど……私は遠くから、見てただけ、で」 ちらりと見上げたら、サクは目を見開いて。 もう一度つないだ手にぎゅっと力が入った。
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