企画会議

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企画会議

「うーん、今度のお題は“月明かりの下で”か。皆、思いつくことを挙げてくれたまえ。」 「やっぱり多いのは異世界ものなんでしょうかね。月というか衛星が複数あるのが見える世界というか。異世界ものってたいてい太陽や月が複数あるところ多いですよね。」 「現代の恋愛ものなんかもありそうですね。高校生の純愛ものとか、社会人の不倫とか。月が出るとなんかロマンティック♪」 「別に恋愛ものでなくても、こどもにとっては夜に外に出るって、なんか特別な意味合いがあったでしょ。お祭りの夜だけは夜8時過ぎても外にいていいとか、大晦日は夜中に外にいてもいいとか。だから、親に隠れてこっそり外に出るのって高揚感があったりしたんですよね。」 「子供にしても大人にしても、夜に出歩くのって、なんか背徳感というか冒険心というか、通常とは違う心ってあるよね。」 「狼男伝説も、そんな心情が背景にあったりするかもしれませんね。月夜に変身するって、そんな人間の気持ちを誇張したものだったりして。」 「同じ現代でも、人間目線ではなく動物目線のものとかあるかもしれませんね。ネズミ目線で“月夜は目立つから怖い”とか、フクロウやネコ目線で“今夜は獲物がよく見える”とか。」 「時代劇というか、現代社会のように夜が明るくない世界の話もありそうですね。江戸時代末期どころか、明治になっても、夜はまだ暗い時代があったわけですから。まして、みなさん大好きな江戸時代なら、都心部でも夜は真っ暗だったわけですし。」 「だから、怪談が生まれたって背景にもなるよね。闇夜で見えないことで幽霊が誕生したり、妖怪の仕業だと言われたり。ぬりかべ伝説なんて、夜に旅人が移動しないとできないだろうし、すねこすりなんてのも同様。見えないってことは恐怖にもつながるんですよね。」 「そうだね。だから“月の明るい夜だけだと思うなよ”とか、“月のない夜には用心しろよ”って脅し文句があったわけだよな。何度か聞いたことあるし。」 「おいおい、そんな物騒なこと……」 会議は続く。
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