19人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことしないでください。考えるのもだめです」
「冷たいねー。さっきはあんなに抱きついてきたのに」
「あっ…あああれは…!」
燧石で火花が散ったかのように、一気に熱みが増した顔を慌てて覆い尽くす。その隙に、足音が近づいていたことにも気づかず。
「どこに行っておった猫!私をほっぽってこの女と戯れか、怒るぞ!」
びくうぅ!っと肩を揺らした私は、突然現れた人影に平常心を心がけ向き直った。どうやら後方から、男の人からしてみれば前方からやってきたようだ。
栗色の髪がこれでもかという程長く伸ばされ、前髪がきっちり揃った、幼い少女だ。髪と同じ色をしたぱっちり目からして、とんでもない美少女。髪のつやからしても育ちが良さそう。な人がどうしてこんな辺鄙なところに。場違いにも程があると思う。
腑に落ちない、引っかかるなと、眉をひそめていると、傍らで呆れた声が。
「どっちが勝手に消えたんだか」
それに反応した美少女が牙をむきだしにして、整った顔つきが吠えた。
「戯け!お主が先に消えたのだ!危うく死にかけたのだぞ!?」
最初のコメントを投稿しよう!