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美少女はうむうむと得意げに頷く。慣れているのか、暫し考え込んですぐ、その答えは滑りでた。
「うちには猫がいるからな!忠実な犬がいい。黒髪に赤い瞳…絵巻に出てくる八百比丘尼族のようだから八百丸にしよう!」
胸が弾むどきどきが、胸をぎゅっと掴まれた後のどきどきに様変わりした感覚が押し寄せる。しかも、
「…八百丸って、男?」
「和歌の読み直しが必要みたいっすねー」
見兼ねた男の人も呆れた声で指摘する。これは期待しない方がいいみたい。私は前のめりになっていた上半身を真っ直ぐにし、胸に手をあてて述べることにした。
「八百丸より、漆猫とお呼びください。それが私の名です」
「変わっておるな。お前も猫だったか」
「え?」
美少女は腰に手を当てこちらを興味なそうに見守る男の人へ視線を促した。
「こやつは猫沖矢丞。な?猫であろう?」
「猫とは呼ばんでくれよー」
頭の後ろで手を組んだ男の人。ではなく、猫沖さん?はまたそっぽを向いてしまう。猫とは呼ばないでほしいなら、何か案を出して欲しい私からしてみれば、話しかけづらくて困る。
「じゃあなんて呼べば…」
消え入りそうな声がやっとこさ出た。
「気軽に桃姫と呼ぶがいい!」
何故かその言葉を拾った美少女は、桃姫というらしい。なんて気さくな!と途端に嬉しくなり、声が弾む。
「はい!可愛らしいお名前です。姫様なんですね」
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