外の世界の姫

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「猫、こやつを誑かすでないぞ」 「そりゃ命令ですか、姫さん」 「命令だ!馬鹿者め!」  バシッと渇いた音が破裂すると、矢丞さんは肩を押さえて項垂れてしまった。桃姫の殴拳は受けないのが得策のようです。  仕方なく、桃姫の残した焼き魚を平らげると、‪サッ…と襖が開かれ、木漏れ日がさす。侍女が頭を上げると、眩しさから解放される。 「姫様。お琴の時間でございます。お支度をお願いします」 「もうそんな時間か?日程の組み方を間違えてはないか?」 「いいえ、姫様。予定通りにございます。その後には江西様との会合を控えております。詰まるところ申し訳ありませんが何卒ご理解を」  床に額があたるまで下げる様に、桃姫は肩を落として眉を下げた。徐に立ち上がると、疲れた目を私に流して言う。 「仕方あるまい、行ってくる」 「はい」  私は、こう答えるしかなかった。 彼女が自室を後にし、食器を片付ける中で、一人、呟く。 「どこも姫というのは大変なものですね」  きっと、その消え入りそうな声は、お腹を満足気にさする矢丞さんには聞こえていないだろう。
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