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「え、桃姫はおいくつなのですか?」
「十一だ」
「見えない」
「無礼な!見えなくともそうなのだ!」
「ま、姫より漆猫の方が教養を身につけてるけどな」
颯爽と現れた赤毛の彼を、桃姫は訝しげに睨み返す。
「何故分かる。漆猫、私と勝負だ」
「ええ!?無理、無理無理無理!私教養なんて受けて」
何故かとばっちりをくらった私は冷や汗をだらだら垂らし、末短い寿命が更に縮んだ、そんな感覚に見舞われていた。
桃姫の無茶ぶりはどんなに現実味がなくても実行する。末恐ろしいものだ。
「流鏑馬で勝負だ」
意気揚々と告げた彼女の顔つきはそれはそれは生き生きとしている。加えて、彼女本来の輝きを後押しする、誰もが見惚れる気品と美しさを兼ね備えている。
勝負を申し込まれても、私に拒否権はないはず。それでも、この場を切り抜けるために弱音が溢れる。
「馬にも乗れないのに」
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