舞われ始めた風車の如く

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 人喰い花を仕留めた時とは打って変わって優しい手つきでその人は着物と布切れを繋ぎ合わせて肌を隠してくれている。 「これでよし」 「す、すごい」  手際よく厚らってくれた男の人はすくっと立ち上がると頭をかいて見下ろす。 「あんた、こんなあやかしの巣窟で何してるんすか」 「………え、」  言われて気づきたくなかったことに肝を冷やす。やっぱりここは、あやかしの住まう格好の隠れ家だったんだ。  霧からも出られない絶望的な状況を突きつけられ、落ち込む私を見て同情したのか、ふぅっと息をつく声が落ちる。 「歳もまだ幼いのに、無理して独り立ち、ってところっすかねー。んで、迷いに迷ってこんな辺鄙な所に」  哀れみだ。これは完璧に哀れんでいる。納得いかない。それに、とキッと目に力を入れて睨み上げる。すると、凄んだのが効いたのか二回の瞬きをして少し驚いている。  つけ込むならここだ、とすくっと立ち上がって手を腰に当ててその人を見据える。 「ちょっと、そう歳も変わらないのにそんな言い方」 「俺、二十六っすよ」  言ってやろう、と思ったのに、泡を噴かされたのは私の方で。 「えぇ!?う、嘘」  驚きを隠せず声に出てしまい、その様子を見た男は余裕のある笑みを浮かべて、今度はその人が手を腰に当てた。まるで私が背伸びをした子どもみたいな扱い!  だけど見た目は本当に歳が近そうで、幼くて綺麗な顔立ち、浮世離れしていて髪が長いからか肌が白いからか女の人にも勝る。はねっけな髪を一つに結んで、緩く着崩した着流し。色男とも思わせる、彼はぐうの音も出ない私を目を細めて見ていた。 「なぁ、あんた。八百比丘尼族か?陸山(りくざん)の者じゃあなさそうだし、あやかしを必要としてるのか」  そういう、こと。普通の人間からしてみれば、八百比丘尼族は煙たがられ、恐れられるという。それがこの反応を生む。だけど言わせてもらいたい!  みんなして八百比丘尼族だからどうのって!
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