外の世界の姫

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 矢丞さんから一通り流鏑馬の作法を習い、私は言われた通りにやってみる。  射手、諸役ともに神拝が終わって馬場に行き、馬場を一通り見て回り、射手は馬場末に集まり並び、ウマを立て、そして疾走する。  あとは感覚に身を任せる。風を感じながら、それでも弓をピンとたて、狙いを定める。  弓矢を放った途端に受ける反動、そして射抜いた時に押し寄せる爽快感と浮遊感は今まで味わったことがない。  手綱を手に、感銘に体をしびらせていると、歓喜が上がった。 「すごい、すごいぞ漆猫!やはりお主しかと教養を受けておるな。これならば客人として丁重に扱える」  それを聞いて、私は桃姫の元へ急ぎ、問いかける。 「どういうことでしょうか。そんなに扱いが変わるものですか?」 「馬鹿か、お主。大違いだぞ。教養を身につけていないぐずなど、貴族と関わりを持って良いわけがないだろう」  薄々気づいてはいたけれど、やはり私は驚かずにはいられなかった。 「き、貴族!?」 「知らなかったのか。さすがは世間知らずの箱入り娘だな」  ふんっと鼻を鳴らして髪を払った姫の口を、私は凝視してしまう。いや、自分の耳を疑うべきだろうか。恐る恐る胸につっかえる(もや)について尋ねる。 「それ、どこで」
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