外の世界の姫

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「桃姫はあやかしが好きでしょう?それと、桃姫の舞は見惚れます。とっても」 「そ、そうか」 「あやかしの中でも随一の踊り子がいまして、きっと、桃姫の世界を広くしてくれるんじゃないかと思ってその方の元へ向かってるところです」 「それはいいな!ぜひとも手合わせ願いたい。しかしなんだ、お主はあやかしを嫌っていたのではなかったのか」 「人間と同じで、好きな方は好き、苦手な方は苦手、嫌いな方は嫌い。ただそれだけの事で、あやかしにも相性はあります。近頃はまた別の意味で避けてますけど」 「お主も苦労してるのだな!」 「お互い様ですね」  はにかんだ私に対して、桃姫の表情はすっかり明るくなっていて、満面の笑みを返してくれる。  その後無事に踊り子にも会え、桃姫の豊かな感性が全面に出るところを間近で見られた。彼女が輝く時、それは、心のままに動いている時。誰かに言われてではない、己の意思で体を動かす。それができないあの屋敷内はただの檻でしかない。  私達は、誰かの操り人形なんかじゃ、ないのだから。いつも間に考え込んでいた私から笑みは消えていた。これから待ち受けることは、容易に想像がつく。立ち向かわないといけない。否、立ち向かう絶好の機会がすぐそこに訪れるのだから。  そして、予想通り、日の沈んだ屋敷内は慌ただしく、私達の帰りを今か今かと待っていた。桃姫が馬から降りると取り囲むように押し寄せる侍女が口々にその名を呼んだ。
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