外の世界の姫

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「いいえ違います」  気味の悪い笑みまでみせつけられて、私の中の憤怒は煮え滾りすぎて火傷しそうなくらい胸が痛む。  そんなことも知らず、彼女は流暢に語る。 「何が違うのですか。私はあくまで教育係として述べただけで」 「それも違います」 「っ」  熱の篭った主張に、流石の彼女も怯み、息をのむ。少しでも、響いてくれればいい、この場にいる者に、少しでも分かってほしい。 「姫様が心配だった素振りなんてして、そんな見え見えの演技を見せつけておいて、あまつさえ嘘を吐いた。貴方達は下郎です。そちらこそ、立場を弁えたらどうですか」 「よい、漆猫」 「よくありません!」  弱々しい声に、私は構わず力強く否定してしまった。びくつく小さな体、潤んだ瞳に不安の色を乗せていることを知っておいて。それでも、言わずにはいられなかった。 「貴方方には心が見えないようなのできちんと言葉にして呑み込ませます。桃姫は、貴方方の道具ではありません。仕えるのなら、それなりの誠意を見せたらどうですか」  ピリついた空気に訪れた、息をすることも許されないほどの静寂。半歩引きながらも私から目を離さない有津乃中宮を、私は容赦なく睨みつける。
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