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「違います!私はあやかしなんていなくても───」
犬歯を剥き出しにして訴えかけたところに、
「そこの女!やはり現れたな、八百比丘尼族め!」
それを真っ向から否定する野次が飛んできた。どこから!?
やるせない気持ちは殺意に変わり、声のした方へその視線を滑らせる。ぼんやりと見えていた視界がほんの少し晴れている。霧が散らばっている様はきっと、薙刀か何かで霧散させたのだろう。
そうまでしてなんでこっちに掛けてくるんだろう。見れば四人の人影が各々武器を持って足早に向かってくる。
雲行きの怪しくなる旅路の矢先で起きる出来事。不満を抱える私の傍らでは何故かから笑いが聞こえる。
「噂をすれば、あんたら懲りないっすねー。まだ八百比丘尼族の力が欲しいんすか」
「だから!私は違うんですって!ねぇ!」
聞いてよ、と半泣きになっている私に向き直ったその人は、頭に掌をのせ、まるであやす様に言う。
「八百比丘尼族はあやかしを必要とし、あやかしもまた、八百比丘尼族を好む。あんた、好かれすぎっすよ」
言われて腰に抱きつく攫猿の存在を疎まながら気づいて、慌てて
「もう!あっち行って!私はあんた達なんか必要じゃないの!」
半ば強引にひっぺがす。その間に、
「かかれ」
と号令がかかった。いやいや、かかれって何!?知らないよこんな人たち。すぐ側まで駆け寄ってきたその人達は人相もよろしくない!つまり捕まったら?まだ十八の歳も終えていないのに死ぬなんて真平よ!
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