漆猫という人間

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「まさか、私があやかしだって言いたいんですか!?退治したいんですか!?ひどいです!どうやったらそんな無粋な答えが息を吐くように出てくるの!?しかも初対面だよ?あんまりじゃないの!」 「ほら、逆上するところからして怪しいじゃない」 「証拠は?人に見えないっていうの?人でなし!最低!見る目ないんじゃないの?」 「き、君ね、いくらなんでも」 「何ですか!人でなし!人を人として見ることができないんでしょ?そっちの方がいわく付き変人じゃないの!」 「俺は変人なんかじゃ…」  理不尽さに怒り狂う私と、まさかの反撃に狼狽える青年。その言い合いに終止符を打ったのは、 「ぷっ」 誰かが吹き出す声だった。 「え」  青年が先にその姿を目にし、驚きのあまり喉に言葉がつっかえたようでそれ以上何も言わなかった。気になって振り返った私も、 「あ」  としか言葉が出なかった。  だって、だって!! 「何笑ってるんですか!ぜんっぜん面白くないんですけど!」  一生懸命笑いを堪える矢丞さんがそこにはいたから。 「いや、むっちゃおもろいよ?いいねー、俺あんた好きだわ」 「はい?」  神出鬼没な矢丞さんだけど、これはあんまりだわ。私は本気で腹立っているんだから。  と、おちゃらけた様子だった矢丞さんがドスの効いた色を宿して、青年を見据えた。 いつ見ても、この変わり様は慣れない。
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