漆猫という人間

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 塗装なれていない道なき道を歩く私は、先程の一言に悩まされていた。 『どう見ても君は人間じゃないからね』 「はぁ」 「ため息なんかついちゃって、嬢ちゃん気にし過ぎる質?」 「私ってそんなに胡散臭いですか?どこがどうあやかしみたいなの?」 「…顔」 「え」 「目」 「うそ」 「鼻」 「ん?」 「口」 「ちょっと」  矢丞さんの前に躍り出て、自分の顔を指さして改めて問う。 「私の顔そんな変?」  すると矢丞さんは、大人の笑みを浮かべて私の頭を撫でる。顔を近づけて、 「可愛いーですよ」  なんて言った。みるみるうちに赤面していく私を認めて、彼は顔を遠ざけた。 「へ、あ、いや、違う違う!何言ってるんですか!」 「なーに慌てちゃってんの。漆猫が聞いたんだろー?」  振り返った彼は意地の悪い笑みを浮かべて、明らかにからかっている。私は結構真面目に聞いているのに。
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