舞われ始めた風車の如く

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 あやかしの中でも特に強大な力を有し、八百比丘尼族にすら滅多に姿を見せないという、上級のあやかし。そんな天狗が何故、今私たちの目の前に立ちはだかるのか。不安が立ち込める私は、見ず知らずの男の人にしがみついていた。  ぎら…私の細かな動作に目をつけた天狗が不服そうに口を開く。 「聞いてんのか、人間。どういうつもりだ」  怖い。目つきも口調も、悪人面もさっきの人達とは非でないくらい、畏怖そのものな存在に、私は喉が乾いてしまう。そんな状況下でも、この人は呑気な声を上げる。 「やー、矢丞さんこの状況がよめないだけどよー」  と、声色に違和感を覚える。嫌な予感に任せてその人の顔色を伺うと、笑っていながらも棘のある言葉が飛び出した。 「あんたこそ何」  威圧を思わせる一言に、その場の空気はさらに重苦しくなった。ただ、天狗の方は一切怯むことなく静かにこちらを見据えていて、やはりただならぬ相手に出くわしてしまったと後悔の念が募る。 「はっ、噂の女が契もかわさず村を出たって聞いたんでな、一目見ておこうと思っただけだ。てめぇみたいな人間には関係ない。失せろ」  …え。村ってまさか。  頬がひきつる私は手汗をかきそうなくらい、握る力を強くする。それに反応してか、彼はわざとらしく大きな声を発する。 「だってよー、あんた八百比」  その単語は禁止!すかさず弁明を図る。 「あ!!!その人ならまだ村にいますよ!だって箱入り娘なんですから、村から出れるはずないじゃないですか!」  慌てふためいて自分でも笑えるくらい適当な法螺は、天狗にも同じように感じ取れたようだ。呆れ顔満載で私を見据えているのだから!
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