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「あのな、俺様をなめるのも大概に」
「いやっすねー。こんなあからさまに嫌がられてるのに、あんたも契りを交わしたいんすかー」
え?
思わぬ切り口に、私は目を丸くして彼を伺った。その横顔は、余裕たっぷりに妖艶な笑みを称えていて、どちらがあやかしか見まごうほど恐ろしい。
「巫山戯るな。俺様はあんな間抜けな人間共の力など必要ない」
「とか言ってさっき俺達を助けたくせにー。照れくさいのか?」
そういえば。さっき地面すれすれで巻き起こった上昇気流と天狗。天狗は風を巧みに使えるし、有り得る。
天狗さんはものすごく動揺していた。
「はぁ!?」
あのな、と付け足しているところに、私は深々とお辞儀をしてその続きを阻止する。
「ありがとうございます」
途端に黙りこくってしまった天狗をちらっと伺うも、ぷいっとそっぽを向かれてしまう。掴みどころが読めない、気難しい質のあやかしなようです。
「んじゃ礼も言ったことだしさ、行きますか」
この人はこの人で自由すぎる。
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