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05.総てを保存するために
「まさか二人で国中を回ることになるとは思わなかったわ」
「それは俺の台詞だ」
俺と彼女は出版物の保存のために、各地を回ることになった。希少価値の高いものを優先しながら、保存するために図書館員として図書館を訪問するのだ。
彼女はその特徴的な銀色の目を隠すために、カラーコンタクトを身に着けている。あの雄弁な彼女の目が見られないと、彼女の思考が読みにくいのは新しい発見だった。
俺がなぜこんなことをと思わないでもなかったが、彼女をとめられるのは君しかいないと言われたのと、銃の扱いが一番うまいという理由から抜擢されてしまった。
それに彼女たちの存在を秘匿するためには、もういろいろ知っている俺が一番適しているということだった。彼女たちの存在を秘匿するという意見には賛同しかなかったため、俺は折れたのだった。
……反論するのも面倒だったというのもあるが。
「次の図書館までどのくらいかしら?」
「あと一山超えてからだろうな」
俺は地図を確認しながらそういった。
「そう……あちらに着く前にご飯頂戴?」
「……君が食べたいものなんて、ないに決まっているだろう?」
彼女はどんな知識でもいいわけではない。
本の虫≪リベウォエッセ≫と呼ばれる知識が栄養になる彼女たちの中でも、様々な嗜好が存在するという。
その中でも彼女は稀覯本狂≪リブリアース≫と呼ばれる存在だ。珍しい情報を主食にしている。そう考えると、”俺の中身”つまり俺が覚えてはいないが、耳で拾ったために記憶している軍事機密とやらを欲しがることにも納得だった。
「ここにあるじゃない?」
彼女は俺の頭を撫でる。このやり取りも日常茶飯事だ。
「ダメに決まっているだろう? 君にこの情報を渡すわけにはいかない、俺も覚えていないから、どんな重要なものかもわからない。それ以前にこの国の軍事機密だ、渡せるわけないだろ」
「そう、でも諦めないから、貴方がわたしに差し出したいと思うまでね」
「フィーア、いい加減にしろ」
そう彼女に呼びかけると、彼女の背がぴんと張った。フィーアというのは俺が彼女と契約するときに名づけた名前だ。本の虫≪リベウォエッセ≫たちは、人間が名前を与えることで、その人間と協力しているということになるという。
「仕方ないわね、図書館で補給するわ」
「そうしてくれ」
「でも契約は守ってね? わたしが太古の話をする代わりにあなたが稀覯本を補給してくれないと……本当に貴方の頭をからっぽにしてしまうわよ?」
彼女はそういうと、これでもかとカラーコンタクト越しに銀色の目を輝かせた。
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