目が覚める

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「馬鹿言え、女が剣を振れるわけがないだろ」 新選組1番隊組長。それ以上の答えはない。 「はいはい」 興味が失せたのか、そもそもなかったのか。ぺたぺたと足音を立てて、立ち去った。 「なんだ、トシも起きてたのか」 「月が明るすぎて眠れねえんだよ」 病人でもないのに、病人よりも青白く見える。 「いい句ができそうか」 繰り返された反応に、溜息を堪えられない。 「近藤さんは」 「人殺しだ、と言われた」 「違いねえ」 「そうだな」 久しぶりにこの人の弱々しい声を聞いた。 「山南を殺したと言われた」 死から、1月(ひとつき)が経とうとしている。だからだろうか、今夜だけで思い出すのは二度目だ。
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