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目が覚める
眠れない。我慢ならずに、部屋を出て縁側に腰掛けた。微睡んでいた意識が覚醒していくのを感じる。見上げれば、ぞくりとするほどに月が明るかった。
「いい句でも詠めそうですか」
「んなのじゃねえよ」
しんとした夜でも彼の気配を伝えるのは、軽口だった。
「どうした、こんな遅くに」
青白く照らされた顔は、子供のように唇を尖らせた。
「風呂ですよ。昼間は、皆が心配して部屋から出られないので」
皆が同じ顔をしているから辛気くさくてならない、とわけのわからないことを言う。
でも、土方さんは違うから面白い、とも。
返事に困るのを見て、楽しんでいるのだろうか。
「娘は昼間、女は月夜に映えるというのを聞いたことがあります」
そして、この変わり身の速さ。
「総司、用があるんならさっさと済ませて」
「土方さん。私が女だったら、どうされますか」
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