白い虹

11/16
272人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
学校で遠く見かける事はあっても、近くで話すような接点はなかった。だから、こうやって話してるのが不思議なくらい。 「……あ、今日……満月?」 大きな月を指して青山くんが言った。 「そうみたいだね。青山くんは塾、何教科?」 「1教科書の2マス。でも、1マスに減らすかも」 「そうなんだ……私は増やしたいくらい」 「何で? 成績いいじゃん。塾の模擬テストも結果貼り出されてたけど……余裕だろ」 「……家に居たくないんだよね」 つい、言ってしまった。 「……何で?」 身内の恥を晒すようで、自分で言い出したくせに、話す事に戸惑った。沈黙を優しく見守ってくれる青山くんに、この人なら大丈夫。そう思った。 「両親が不仲でね。私が受験終わるまでの関係で、ギスギスしてるの。私一人っ子だから、逃げ場もなくて。……私が居なければ結婚することもなかったし、無理に続ける結婚生活も無かったのになぁ」 歩道橋の柵に両手を預けてた青山くんが 「あの塾、1教科増やすと、いくらだと思う?」 「……え、知らない」 「結構な値段。たぶん、生活費の中で一番の出費だ。それだけ白川さんに注いでるんだよ」 ……当たり前に思ってたそうか、その為に両親は、働いて……。恥ずかしくなって俯いた。安易に増やしたいと言った事に。 「あー、違う違う。それくらい、大事なんだって。白川さんの事が。母親も、父親も。その気持ちが一緒だから、別れないんじゃない?」 ……見上げた月に、薄い雲が掛かる。雲を通すと月のまわりに、ひと回り大きな光の円が出来た。 「あ、月暈(つきがさ)……」 青山くんに並んで、私も月を見上げた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!